金融工学は、値動きのある金融商品のリスクやリターン、理論的な価格などを、数学やコンピューターを駆使して数値化し、分析し、リスクヘッジやリスクマネジメントに役立たせたり、投資や資産運用の意思決定に役立たせたりすることを研究する学問です。金融工学の中でも有名な研究としては、1950年代に出された現代ポートフォリオ理論や、1970年代のデリバティブの価格理論などが挙げられます。また、ここ20年程度の間にそれらの理論を提唱した学者たちがノーベル経済学賞を受賞したことによって注目度が高まった、比較的新しい...
QEとは「Quantitative Easing」の略で、量的緩和(政策)を指します。量的緩和は各国の中央銀行が市場に大量に資金を供給することで、デフレの脱却や景気を刺激することを目的として行うものです。米国で行われたQEのうち、2008年11月~2010年6月までが「QE1」、2010年11月~2011年6月までが「QE2」、2012年9月~2014年10月は「QE3」と呼ばれています。
休眠預金とは、長期にわたって預け入れや引き出しなどの取引がされていない、眠ったままの銀行預金口座のことで、休眠口座ともいいます。最後の取引日から10年以上経過した口座のうち、本人と連絡がつかないものを指します。結婚や引っ越し、死亡などを機に長期間使われなくなった休眠預金は、基本的に金融機関の収益として扱われ、毎年約1,000億円分発生するといわれています。有効活用できないかという機運が高まり、政府や地方自治体が社会的課題の解決のために活用できる「休眠預金活用法」が成立し、2018年1月に施行され...
業況判断指数とは、「日銀短観(日本銀行の全国企業短期経済観測調査)」で発表される景気の判断指数のことです。「景気が良い」と感じている企業の割合から、「景気が悪い」と感じている企業の割合を引いたもので、DI(Diffusion Index)とも表されます。DIの数値は50が横ばいを表し、これを上回ると「景気が良い」、下回ると「景気が悪い」と感じる企業が多いことを示します。指数は製造業と非製造業に分かれており、在庫の影響を受けやすい製造業の景況感は景気に敏感に反応するので、大規模製造業の業況判断指数...
日銀が民間の金融機関に直接資金を貸し出すときの基準金利。2001年2月に導入された補完貸付制度(ロンバート型貸出制度:金融機関が一定の条件のもとで、あらかじめ差し入れた担保の範囲内で日銀から借り入れを行うことができる制度)に適用される金利で、金融市場における短期金利(コールレート)の変動上限になっています。かつては公定歩合と呼ばれ、日本銀行の政策金利として機能しており、預金金利や為替レートにも強い影響を持っていましたが、政策金利が無担保コール翌日物金利(オーバーナイト・レート)に変更され、公定歩...
一般には現金(キャッシュ)の出入りという意味で使用されますが、(1)企業会計上と(2)証券投資においては意味が異なります。(1)会計上のキャッシュフローでは、企業がどれくらいキャッシュを獲得し、何に使い、最終的に手元にいくら残っているかを見ることで企業活動全般の動きを捉えようとするものです。日本では、2000年3月期決算より、上場企業等にキャッシュフローを企業の活動領域(営業活動、投資活動、財務活動)別に区分して計算したキャッシュフロー計算書を作成し、公表することを義務づけました。(2)証券投資...
キャッシュレス(Cashless)決済とは、紙幣や硬貨を使わない決済方法のことです。大きく分けると①クレジットカードなどの後払い(ポストペイ)、②あらかじめ入金する前払い(プリペイド)、③デビットカードやQRコードなどで預金口座から直接引き落とす即時払い(リアルタイムペイ)の3種類があります。それぞれカードに加え、スマートフォンによる決済も普及しつつあります。ただし、現金志向が強い日本ではキャッシュレス決済の比率が約3割と、海外に比べてかなり低いのが現状です。韓国は9割、中国は6割、米英も5割前...
「機械受注統計調査」は内閣府が毎月公表している経済指標のひとつで、代表的な景気の先行指標となっています。機械メーカーが受注した設備投資用の機械の受注額を集計したものです。一般に企業が増産を行うためには設備投資、すなわち機械を購入して準備しなければならないため、機械受注は、企業の実際の設備投資に一定の先行性を持っているとされています。つまり、機械受注が好調であると公表されれば、将来の企業業績にプラスの影響をもたらし、設備投資関連の銘柄だけでなく、株式市場全体、景気全体を動かす場合もあります。船舶・...
機関投資家とは、生命保険会社、損害保険会社、信託銀行、普通銀行、信用金庫、年金基金、共済組合、農協、政府系金融機関など、大量の資金を使って株式や債券で運用を行う大口投資家のことをいいます。一般的に機関投資家は、あまり短期間での売買をしないのが通常です。優良企業の株をじっくりリサーチしたうえで買いの判断を下し、長期的な企業の成長や経済の状況を見ながら運用し、上昇トレンドに乗り始めるとまとまった資金で買い足していくというスタンスの機関投資家もたくさんいます。また、下降トレンドになれば機関投資家の大量...
企業統治指針とは、英語のCorporate governance Code(コーポレートガバナンス・コード)の日本語訳で、上場企業に企業価値の向上を求めるための行動指針のことです。金融庁と東京証券取引所が2015年に導入し、2018年に改定されました。取締役会の役割や、透明性、平等性の確保、株主との対話といった全78原則から構成されており、強制力はありませんが、これらの指針を守らない場合は投資家に対して理由を説明することが求められています。さらに2021年6月にも改定が行われ、取締役会の機能発揮...
カントリーリスクとは、投資対象国や地域において、政治・経済の状況の変化によって証券市場や為替市場に混乱が生じた場合、そこに投資した資産の価値が変動する可能性のことをいいます。特に国債など、その国の発行する債券に投資している場合は、発行元の国の政治・経済状態は非常に重要です。国はつぶれないという思い込みは危険で、世界では経済危機に陥っている国もあるのです。特に新興国では、対外債務の不履行を宣言して国債がデフォルトすることも決して珍しくありません。国債は、国が発行している借金の借用書です。国が破綻し...
官民ファンドとは、国の政策に基づいて政府と民間が共同で出資する政府系ファンドを指します。国と民間が特定の目的のために資金を出し合って基金を作り、投融資を行って、その配当や収益を分配する機関です。政府の緊急経済対策として期限付きで創設されることが多く、産業革新投資機構や地域経済活性化支援機構などが該当します。
間接金融とは、預金者などからお金を預かり、それを必要な人や企業に貸し出す取引のことです。間接金融では、株や債券などの直接金融とは異なり、貸す人と借りる人の間に銀行のような第三者が介在することになります。間接金融では信用リスクは銀行が負っている半面、直接金融に比べて利息などのリターンが少なくなります。
完全失業率とは、労働力人口(15歳以上の働く意欲のある人)のうち、完全失業者(職がなく、求職活動をしている人)が占める割合で、雇用情勢を示す重要指標のひとつです。総務省が「労働力調査」で毎月発表しています。完全失業者数を労働力人口で割って算出し、数値が高いほど仕事を探している人が多いことを示します。雇用動向を示す指標としては、他に厚生労働省が発表する有効求人倍率があります。雇用は景気に大きな影響を与えるため、米国の雇用統計と同様、市場関係者から注目を集めています。
為替変動リスクとは、円と外国の為替相場の変動により、外貨建て資産の価値が変動する可能性のことをいいます。投資の世界において、リスクとは、値上がり・値下がりを含めてどうなるかわからない(不確実)ということを意味します。投資家は国ごとの経済成長率やインフレ率、国際収支などの動向を見て、経済成長が期待できると予測される国に投資をします。そのため、多くの人がそう考えて、ある国に投資すると、その国の通貨がたくさん買われることになり、通貨は強く(高く)なります。基本的には、為替も需要(買いたい人)と供給(売...
為替レートとは、ある国の通貨を他の国の通貨に交換するときの取引価格(交換比率)のことです。為替レートは、その国の経済情勢の変化や個別のニュースなどに反応して日々刻々と変動しています。国際的な取引決済に最も重要視されているのが米ドルとの為替レートで、多くの国が基準としています。日本と米ドルとの為替レートの表示方法はたとえば1ドル=100円という、外国通貨1に対して自国通貨がいくらかを示す自国通貨建てが一般的です。外国為替は、世界各国の為替取引がすべてひとつの市場になっており、原則、「眠らないマーケ...
企業の会計監査をすることが認められる法人。監査法人は公認会計士法に基づき設立される法人組織で、設立するには5人以上の公認会計士が必要です。主な業務内容としては、企業の会計監査人となり、企業が作成する財務諸表や計算書類をチェックし、適正に作成されているかの意見を付します。なお、金融商品取引法で定める企業内容開示制度では、上場会社は有価証券報告書を事業年度ごとに作成・提出することが義務付けられていますが、この場合にも特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければならないことにな...
割安な株式を買い建て(ロング)、割高な株式を売り建てる(ショート)ことにより、安定的な収益を狙う投資手法を株式ロングショートといいます。これはヘッジファンドにおける代表的な戦略で、2000~2003年の全体相場が下落する局面でも安定的に収益を積み上げた実績から注目されるようになりました。
為替介入とは、通貨当局が外国為替市場において、相場に影響を与えることを目的に外国為替の売買を行うことを指します。外国為替平衡操作とも呼ばれることもあります。日本の場合には、円相場の安定を実現するために財務大臣の権限によって行われます。日本が単独で行う場合は「単独介入」、欧米など、各国と合意のうえ、一緒に行う場合を「協調介入」と呼びます。2022年9月には、急激な円安進行を抑制するため、約24年ぶりとなる円買いの為替介入が行われました。
為替ヘッジを行う方法として先物予約がありますが、為替予約をする場合には一方の通貨を買って、もう一方の通貨を売ることになります。為替ヘッジプレミアムとは、高金利通貨を買い、低金利通貨を売った場合に得られる2国間の金利差相当分の収益のことです。逆に、高金利通貨を売り、低金利通貨を買った場合には、金利差分のコストが発生することになりますが、このコストを為替ヘッジコストと呼びます。