マーケットにおいて、発生する可能性が非常に低いものの、発生した場合に大きな影響が発生するリスクをテールリスク(Tail Risk)と呼びますが、その損失を回避(ヘッジ)するために行う取引をテールヘッジ(Tail Hedge)といいます。ちなみに、テールとは騰落率分布の端や裾野を意味する言葉で、突然の政権交代やテロなどが代表的なものです。テールヘッジ戦略は、デリバティブ商品を活用して極端な株式市場の下落から利を得る投資手法で、「ブラックスワン回避法」と呼ばれることもあります。
テーパリング(Tapering)は直訳すると「先細り」や「次第に先が細くなっていくこと」という意味で、金融用語ではQE(量的緩和)の縮小を意味します。米国で2012年9月から行われている「QE3」では7回にわたり従来毎月850億ドルだった資産買い入れ額を100億ドルずつ減らしていくテーパリングを実施しました。また、2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大局面では、各国が大規模な金融緩和に踏み切りましたが、米国では当初の予定を前倒しし、2022年3月でテーパリングを終了し、政策金利の利上げに踏...
データマイニングとは、膨大な量や様々な形式のデータ(ビッグデータ)の中から、有用・有効なものを発掘する技術や手法のことです。近年、企業や個人の経済活動などを認識するためのビッグデータ分析に注目が集まっていますが、ビッグデータだけでは単なるデータの固まりであり、それを活用するためには有用なデータを分類・抽出する必要があります。データマイニングは、ビッグデータの分析に不可欠と言えます。
ディスクロージャー(Disclosure)とは、情報開示(情報公開)のことで、多くの場合、企業が投資家や株主、債権者などに対して経営内容などを開示することを指します。法律や取引所ルールによるものと企業が自主的に行っているものがあり、上場企業等が公表している財務諸表や有価証券報告書などは前者のディスクロージャーのための資料に該当します。後者は企業がIR活動の一環として自主的に行うもので、金融機関などではディスクロージャー誌(紙)として経営内容などをまとめたものを顧客に送付したり、店頭に置いたりして...
DRAM(ディーラム)とは、パソコンやスマートフォン、デジタル家電などにも広く利用されている半導体メモリの一種です。DRAM はDynamic Random Access Memoryの略であり、ダイナミックRAMとも呼ばれます。記憶内容の維持のために繰り返し再書き込みを行う必要がありますが、低コストで大容量化が可能なことから、価格や容量が重視されるコンピュータのメインメモリ用として広く普及しています。DRAMは現在、大量生産されている半導体製品の一つであり、その需給が半導体銘柄の株価や市場全体...
証券会社などが自社の資金を株式市場などで運用することを「ディーリング」といいます。そのディーリングを行う担当者のことを「ディーラー」と呼びます。証券会社などには株式のディーラーだけでなく、債券や為替のディーラーなどもいて、それぞれが自己勘定で取引を行っています。ディーリングに対して、顧客の注文を取引所などに発注する業務のことを「ブローキング」または「ブローカー業務」と呼びます。
DeFi(ディーファイ)とは、英語の「Decentralized Finance」の略で日本語では「分散型金融」と表現され、暗号資産(仮想通貨)に関連する記事でよく見かけるワードです。ブロックチェーンの「スマートコントラクト」と呼ばれる技術(暗号資産にプログラムを組み込める技術)を用いて、特定の管理者(中央管理者)を要することなく、自律的かつ自動的に提供される金融サービス全般を指します。中央管理者が存在しないことで手数料を安く抑えられるだけではなく、取引などに関する時間の節約も可能になります。D...
環太平洋パートナーシップ(TPP)協定は、環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定(EPA)を指します。2017年1月、米国が離脱を表明したものの、米国以外の11ヵ国間で協議が続けられ、2017年11月に大筋合意に至りました。その後、2018年3月にチリで11ヵ国による署名がなされ(TPP11協定)、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、豪州、ベトナムの6ヵ国の手続きが完了。これら6ヵ国による国内手続き完了の通報を受けて、60日後の2018年12月3...
通貨を対象とするデリバティブ(金融派生商品)取引のひとつで、異なる通貨間の金利と元本を交換する(スワップする)取引を、「通貨スワップ」といいます。たとえば、ドルでの支払いのためドル建て社債を発行して、通貨スワップで円に換えれば利払いや元本償還が円になるため、将来の支払いが円貨で確定します。通常は、取引の開始時と終了時に元本の交換が行われますが、元本の交換をせずに金利部分だけを交換する通貨スワップもあり、「クーポン・スワップ」と呼ばれています。なお、通貨スワップも、金利スワップ同様、取引所を通さず...
直接金融とは、お金を借りたい人に対して、お金を貸す側が直接的に出資する取引のことです。たとえば、企業が株式や債券を発行し、投資家が証券市場で購入する行為は直接金融となります。一方、預金者からお金を預かり、それを企業などに貸しつける銀行預金などは間接金融と呼ばれます。なお、直接金融では、投資先の破綻リスクは投資家が負うことになります。
長期金利とは、金融機関が1年以上のお金を貸し出す際に適用する金利のことです。短期金利は日本銀行の金融政策などによって決まりますが、長期金利は、主に長期資金の需給関係によって決まるもので、物価の変動、短期金利の推移(金融政策)などの長期的な予想で変動します。そうした特徴から、「長期金利は経済の基礎体温」ともいわれていて、景気が悪くなれば低くなり、景気が良くなれば高くなるという傾向にあります。新聞やテレビなどで報じられている長期金利は、10年物国債の利回りを指します。これは10年物国債の利回りが長期...
中央銀行とは、国家や特定の地域の金融機構の中核となる機関です。日本の中央銀行は日本銀行です。その国や地域で通貨として利用される銀行券(紙幣、貨幣)を発行する「発券銀行」であり、通貨価値の安定を図る金融政策を司るため、「通貨の番人」とも呼ばれます。また、市中銀行に対しては預金を受け入れるとともに、最後の貸し手として資金を貸し出す「銀行の銀行」であり、国の預金を受け入れることで政府の資金を管理する「政府の銀行」という立場を持ちます。中央銀行は金融政策を通じて、物価の安定に対して責任を負っています。ま...
もともとは「万里の長城」(中国)のことですが、金融用語では「情報の隔壁」のことを指します。証券会社などにおいて、内部情報を利用したインサイダー取引などを規制するための自主ルールです。特に引受部門と営業部門との間に必要とされています。一方、銀行と証券会社との間に設けられた情報の隔壁は、「ファイアウォール」と呼ばれています。
地政学的リスクとは、特定地域が抱える政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりが、地理的な位置関係によって、その地域や関連地域の経済、世界経済全体の先行きを不透明にしたり、特定の商品の価格を変動させたりするリスクを指します。たとえば、紛争やテロによって石油関連価格が値上がりして業績が悪化したり、世界経済が停滞したりすることなどが挙げられます。
銀行が最優良の企業(業績が良い、財務状況が良いなど)に貸し出す際の最優遇貸出金利(プライムレート)のうち、1年以内の短期貸出の金利を「短期プライムレート」(略して「短プラ」)といいます。かつてこの短期プライムレートは、各銀行が公定歩合に連動した金利をもとに、信用リスクの大きさに応じて上乗せ金利を付け加えて決めてきました。しかし1989年以降は、公定歩合ではなく譲渡性預金(CD)などの市中金利に連動して決めるようになり、現在では「新短期プライムレート」(略して「新短プラ」)と呼ばれ、一般的となりま...
金融市場(お金の貸し借りをする市場)の大きな分類のひとつで、1年以内の短期の資金のやりとりをするのが「短期金融市場」です。「マネー・マーケット」とも呼ばれます。一方、1年超の資金のやりとりをするのが「長期金融市場」で、「資本市場」や「キャピタル・マーケット」などと呼ばれます。短期金融市場には、金融機関だけが参加できる「インターバンク市場」と、一般の事業会社なども参加できる「オープン市場」があり、インターバンク市場にはコール市場と手形市場、オープン市場にはCD、CP、TB、FB、債券現先、債券レポ...
ダボス会議とは、スイス・ジュネーブに本拠を置く非営利財団、世界経済フォーラムが毎年1月に、スイス東部の保養地ダボスで開催する年次総会です。世界経済フォーラムは1971年に発足し、各国の競争力を指数化し公表してグローバル化に対応した経営環境を推進しています。この会議では毎年、世界を代表する政治家や実業家が一堂に会し、世界経済や環境問題など幅広いテーマで討議しますが、各界から注目され、世界に強い影響力を持っています。日本からも首相や著名な経済学者などが参加しています。
WTI原油先物は、米国の代表的な原油先物商品のことです。WTI(West Texas Intermediate)とは、西テキサス地方の中質原油という意味で、原油の含有硫黄分が少なく軽質で、ガソリンや軽油が多く採れるといった特徴があります。取引量と市場参加者が多いことから、原油価格の代表的な指標のひとつに数えられています。1983年5月にニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に上場し、同取引所の主要商品となっています。原油価格の極端な下落は投資家心理を冷やし、株式市場に悪影響を与えること...
タックス・ヘイブン(Tax Haven)とは、課税が完全に免除されたり、著しく軽減されたりしている国や地域のことで、租税回避地、低課税地域とも呼ばれます。主に税制上の優遇措置を地域外の企業に対して戦略的に設けている国や地域を指し、代表的な場所としてはイギリス領ケイマン諸島、バージン諸島といったカリブ海の島国や、ルクセンブルク、モナコ、米国東部のデラウェア州などが挙げられます。多国籍企業や富裕層が、法人税や源泉徴収税が皆無に等しいタックス・ヘイブンに資産を移し、オフショア取引を利用して租税回避する...
タカ派とは、もともと自分の主義主張を通すためには強硬手段もいとわず推し進める人や集団を指す言葉で、逆に平和主義的な手段を用いる穏健な人や集団をハト派といいます。高圧的なタカと平和の象徴でもある温和なハトのイメージのコントラストをもとにつけられた呼称です。経済においては、各国の中央銀行の金融政策を決定する際、物価の安定を重視して金融引き締め的な政策を支持する傾向があるメンバーをタカ派と呼びます。反対に、景気刺激に積極的で金融緩和的な政策を支持する傾向があるメンバーをハト派と呼びます。